取材道具を詰めた私の夏かごに興味しんしんで、とうとう入り込んでしまったのは、「パプ」くんです。絵本の1ページのようにメルヘンチックですね~。
パプくんは、3年前に佑莉亜さんに保護されたのですが、当時佑莉亜さんが韓流にハマっていたことから、韓国語で「おにぎり」の意味の「パプ」という名をつけてもらったのだとか。なんともふっくら美味しそうなおにぎりですね!
パプくんは、奇跡ともいえるタイミングで、運良く保護された子です。
ちょうど3年前のこと。佑莉亜さんは、裏の工場の物置あたりから聞こえてくる仔猫の鳴き声に前の晩から気づき、気が気ではありませんでした。その場所には、ノラ母さんがどこからかやってきて、毎年のように子猫を産み捨てていくのです。その前年にも生み置かれてぐったりしていた胎盤付きの仔猫5匹を保護し、懸命にミルクを飲ませるなどしましたが、1匹しか生きられませんでした。
今回は、物置の壁から鳴き声が聞こえてきます。さあ、困った。この物置には、年に一回しか人はやってこないのです。
すると、なんという偶然! 年に一度しか来ない大工の棟梁が、次の日、やってきました。そして、すぐさま物置の壁にのこぎりで穴を開け、5匹の兄妹仔猫を救い出してくれました!
5匹は衰弱していて、今も元気なのは、譲渡した1匹とパプくんの2匹なのです。佑莉亜さんは、前回生き残ったツナくんと、パプくんを2年続きで迎え、母さん猫はその後手術をしています。
ツナくんの時もそうでしたが、パプくんがやってきたときも、大喜びで世話をしたのが、現在9歳の黒柴のかん太くんです。
「抱え込んでペロペロ舐めてやり、添い寝したり、遊んでやったり。パプのやんちゃが過ぎて噛みつきが痛いときなどはワン!と吠えてしつけます。パプは素直にゴメンナサイ(笑)。お父さんとしてしっかり育児をしてくれました」と笑う佑莉亜さん。
かん太父さんに育てられたパプくんは、呼べばすぐに飛んでくる犬っぽい猫になりました。
今でも、ふたりは、大の仲良し親子です。
佑莉亜さんと、保護猫のかかわりは、なんと10年前の高校生の時からだそうです。夏期講習に向かう途中で、段ボール入りの捨て猫を見つけ、保護して家にUターン。生まれてきたのにしあわせにならない子の多さを知り、バイトでTNRのお金をためては、制服姿で捕獲器をぶら下げて保護猫専門の獣医さんに通っていました。
介護の職に就き、今の家に越してきたのは、5年前。未手術の外飼いで毎年子猫を増やし続け、亡くなる子も多い近所のお宅に「手術をしませんか」とお願いに行ったりもしました。その時に地元の保護団体が協力してくれて、手術助成チケットも使えたため、その後乳飲み子を保護することもなくなったといいます。今では、その保護団体のお手伝いもするようになった佑莉亜さんです。
27歳にして、コツコツと保護活動歴10年。頭が下がります。
「パプは、いろいろな人との縁を繋げてくれる子なんです。そして、自分が何をしたら人が喜ぶかよくわかっている不思議な子です」
その通りで、籠に入ってくれたり、目の前で転がってくれたり、撮影にとてもよく協力してくれたパプくんでした。
さて、現在佑莉亜さんのおうちには、猫が4匹。犬が3頭。
ボックスの中でおやすみ中だった、灰サビのミルちゃんは、10歳。
キジトラのララくんは、FIPを発症したものの、寛解しました。
4歳のツナくんは、パプくんの年違いの兄弟です。壁のガリガリは、みんな彼のしわざ(笑)。
そして、犬組。
赤柴のすみれちゃん10歳、黒柴のかん太くん9歳、白柴の幸太郎くん7歳。
同じ柴犬でも、それぞれ性格がまるで違います。幸太郎くんは、飼育放棄のネグレクトから愛護センター収容となり、処分2日前に佑莉亜さんに引き出してもらいました。
保護したとき、痩せて下痢をしていて、「助からない」と思えたパプくんを初め、縁あって一つ屋根の下の家族となった犬猫7匹。
何でも壊すやんちゃ犬だったかん太くんが、子猫たちのいいお父さんとなり、佑莉亜さんにもよき相談相手となって寄り添ってくれます。かん太父さんに愛情深く育てられたパプくんが、預かり子猫がやってくると、いいお兄ちゃんをしてくれます。
救ったものの儚く散った命をいくつも見てきた佑莉亜さんの、保護活動の原動力は、この子たちのまっすぐなまなざしに違いありません。
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。
『
猫との約束』
猫は人生にドラマを運んでくる。ささやかでも、至福のドラマを
『
寄りそう猫』
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。
『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。
『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。
『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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読みながら、胸が熱くなり涙が止まりません。かん太くんに埋もれるパプくんの写真のなんと可愛いこと!
うちは、犬と猫が一緒にいたこともありましたが、全く犬さんが子猫さんを受け入れてくれませんでした。
かん太くん、素晴らしい!
佑莉亜さんの気持ちが伝わっているんでしょうね。これからもみんな仲良く!
by ちぃ 2024-06-25 13:56
猫犬7匹とはすごい。とくにパプくんとかん太くんの打ち解けた様子は素晴らしい。佑莉亜さん他皆の愛情でゲージの中のワンちゃんたちも早く仲間に入れますように。
by Y.M 2024-06-25 14:04
長毛の黒白ねこのパブくん、なんて可愛らしい。
黒柴かん太父さんと一緒の写真もいいですね。それでもギリギリのところで命が救われたとは...
兄だいの分まで長生きしてほしいです。
犬組、猫組、大所帯って本当に素晴らしい!
by ヤンヤン 2024-06-26 04:49
かん太くんに寄り添う、ちびちびパプくんの可愛いあんよにノックアウトされました~(=^・^=)
もう、可愛過ぎです♪
そして、高校生の時からバイト代でTNRをしていた佑莉亜さん!
こころから尊敬します。素晴らしいです!
あこがれのワンにゃん人間の大家族のみなさんに、
これからも、たくさんの幸せが訪れますように♪
by ぴっころ 2024-07-01 12:29
>ちぃさん
動物同士の相性というものは、人間が口出しできませんものね。かん太くんは、子猫が大好きだったんでしょうね、とくにパブくんが(笑)。
by 道ばた猫 2024-07-04 10:34
>Y.Mさん
ケージインの犬さん2匹は取材中に飛び回ることのないよう入っていただけで、ふだんはみんな仲良しフリータイムだそうです(笑)。
by 道ばた猫 2024-07-04 10:36
>ヤンヤンさん
犬組猫組、入り混じって、大所帯って、飼い主をボスににぎやか保育園みたいで、楽しいですよね!!
パブくん、きっと長生きしてくれると思います。
by 道ばた猫 2024-07-04 10:40