だいちゃんこと、大福くんは、綺麗な瞳を持つ正統派イケメン猫です。
性格はいたって温厚。人懐っこく穏やかです。が、飼い主の有紀さんは「こう見えて意外と激しい面もあるんです。外にいた頃はボスだったかも」と言います。
大福くんが、暮らしているのは、有紀さんちの広い一階。2階には、別の保護猫グループが暮らしているのです。
2022年の秋に当ブログでご紹介した、お庭のすてきな有紀さんのおうちです。
(
2022年11月01日「キャリア猫たちの安住の家」)
そう、1階組の大福くんは、Wキャリア(猫エイズと猫白血病)なのです。
同じくWキャリアの浜ちゃんと、白血病キャリアのノブちゃんと仲良く暮らしています。
(前回取材したときにはいた松ちゃんはその後発症して旅立ってしまいました)
大きな大福くんよりさらに大きいキジトラの浜ちゃん。
有紀さんがキャリアの子を次々迎えるきっかけとなったキジ白のノブちゃんは、相変わらずひとりでまったりが好きで、マイペースで暮らしています。
じつは数週間前までは、もう1匹、三毛の仲間がいました。その子、たびちゃんもWキャリアでした。
そうそう、大福くんがここにやってきたいきさつをお話ししなければ。
彼は、有紀さんのご近所さんが勤める会社に、1年半前の冬に、衰弱してふらふらと現れた年齢不詳の(たぶん若い)猫でした。とっさに保護したものの、どんな病気を持っているかわからないので、先住猫のいるご近所さんは、物置でその子の面倒を見始めます。ケージが用意できてなかったので、ひと晩有紀さんが預かり、その時に「この子に福が来るように」と願って「大福」と名付けました。
ご近所さんでは、その名前のままに面倒を見続けてくれました。貧血が落ち着いて検査をしたところ、Wキャリアと判明。先住猫と一緒にできないので、物置暮らしのままとなりました。
夏を前に窓のない物置暮らしのままではかわいそうと、有紀さんはこう申し出ます。
「ちょうど保護したばかりの子猫がいるんだけど、その子はノンキャリアだから、大福と交換しない?」と。
それなら、大福くんも、子猫ちゃんも、それぞれのびのびと暮らせるはずだから。
ご近所さんでは、一家をあげて大福ちゃんに情がうつっていたのでお別れはとてもさびしかったのですが、近くならいつでも会えるし、大福くんのためにもと、賛成してくださいました。
藪の中で一人鳴き続けていて有紀さんに保護された子猫は、ご近所さんで「ふく丸」と名付けられて、その後ふく丸のノラ母さんもいっしょに飼っていただくことに。めでたしめでたし。
大福くんは、すぐに1階組に溶け込んでのんびり暮らし始めます。その数か月後に、やってきたのが、三毛のたびちゃんでした。たびちゃんは保護活動をしている方に保護されたものの、Wキャリアと判明。有紀さんが「うちで面倒を見ましょう」と申し出たのです。
たびちゃんも、すぐに1階組に受け入れられ、のんびり暮らし始めました。
でも、今年の春を過ぎて、パタッと食欲がなくなったたびちゃん。
白血病を発症してしまったのでした。
あまり動かないたびちゃんを、心配そうに見守る大福くん。
浜ちゃんもたびちゃんを舐めてやったりと、妹分が弱ったときにはいいお兄ちゃんをしてくれました。
「お母さん、たび、なんにも食べないね。動かないね」
「元気になるといいね」
「ボクが舐めてあげるよ」
でも、たびちゃんは、6月、旅立ってしまいました。
有紀さんは言います。
「キャリアの子を見送るたび、、これでよかったのかなあという思いははいつもあります。キャリアやWキャリアの子は、隔離生活を余儀なくされることが多いけれど、短い一生だったにせよ、ここでは仲間ができて、それぞれマイペースでふつうの家猫生活ができた。それだけはよかったかなあと」
思いがけない優しさを見せた大福くんでしたが、意外な笑える一面も。
「とにかく食べ物に目がないんです」と、有紀さん。
「猫用おやつを取り出す音でもしようものなら、真っ先にすごい瞬発力ですっ飛んできて、『オレが先だ~』と他の子を押しのけてまで食らいつきます(笑)」
よほど放浪時代がひもじかったのでしょう。でも、そんな食いしん坊も、元気に今日を生きていればこそ。有紀さんには、どの子もどの子も愛しくてたまりません。
「また遊びに来てね」
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。
『
猫との約束』
猫は人生にドラマを運んでくる。ささやかでも、至福のドラマを
『
寄りそう猫』
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。
『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。
『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。
『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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キャリア猫さんだって、普通の家猫として、のびのび暮らしたいですよね。
有紀さんちの子になれて、みんなほんとうによかったです。
たびちゃんも、松ちゃんも、優しい仲間に見守られて、きっと幸せに旅立てたことでしょう。
大福くん、おすましのお顔、とっても決まってますよ!
佐竹さん、今回も、心があったかくなるお話をありがとうございましたm(__)m
近所のノラの仔猫3匹が、保護しようと思っていた矢先に交通事故で天国に行ってしまい、かなり落ち込んでいましたが、元気をいただきました。
by ぴっころ 2024-07-30 15:29
キャリアのネコちゃんでも発症するとは限らないとはいえ、命に限りがあることは間違いない。そんなつらい思いをすることを覚悟のうえで、何匹もの面倒を見ている有紀さんは凄い。大福くん初め皆感謝していることだろう。それにしても大福くんは”大福もち”にそっくり。浜ちゃんノブちゃんらもふくよかで、大切にされていることがよくわかる。
by Y.M 2024-07-30 17:16
Wキャリアの猫さん達、実に幸せそうですね。
不調なたびちゃんを見守る大福くん、涙が止まりませんでした。
長い猫生ではないかもしれませんが、ここはなんて幸せな場所なんでしょう...
猫さん達は、他の猫生を羨まず、与えられた猫生を生きているんだろうなぁ。
by ヤンヤン 2024-07-30 19:21
キャリアの仔を愛情持って育てておられる有紀さん まるでマザー・テレサのような方ですね。
逝った仔達も、きっと幸せだった事でしょう。
大福ちゃんのような食べ物に目のない仔がうちにもいます。保護した時は既に大人で年齢不詳。フードの準備中はシンクに登り、隙あらば横取りし、他の仔が残したフードを食べ尽くし、人間の食べ物にまで目をキラキラさせています。野良期間が長かったからかなぁ… 食べる事に苦労したんでしょうか?
茉莉子さん、温かいお話ありがとうございます。
by ちぃ 2024-07-30 20:36
お久しぶりです。毎週楽しみにしてますよ♪
うちの子も猫エイズですが
他の子との相性によっては隔離も必要ないし
うちは相性が悪くて隔離、トホホな面もありますが
白血病とダブルとなると・・・
有紀さん、有り難うございます。
by ミンディー 2024-08-01 07:55
>ぴっころさん
猫たちとの出会いって、ほんとにラッキーとアンラッキーが紙一重ですが、それだけに出会えた猫たちとの縁は大事にしたいですね・・・。
by 道ばた猫 2024-08-05 11:16
>Y.Mさん
持病や障害を持っていても、人間社会のような先入観や「可哀そう」という差別と無縁に、こうして自分の生活を楽しむ猫たちに、しあわせあれ!
by 道ばた猫 2024-08-07 12:25
>ヤンヤンさん
はい、命あるものみなこの世から去っていくのですから、寿命の長い短いより、いかに自分らしく生きるかが大事と教えられます。
by 道ばた猫 2024-08-07 12:27
>ちぃさん
たしかに、ノラ歴長くて、食べ物に困った時期があると、食い意地張りますよね!
それもその子の歴史で個性のうちではないかと(笑)。
by 道ばた猫 2024-08-07 12:29
>ミンディ―さん
エイズキャリアの子は、かなり理解が進んで、譲渡会にもふつうに出るようになりましたね。
白血病の子は、理解ある方のもとで、平穏に暮らしてほしいです。
by 道ばた猫 2024-08-07 12:32