先週に続き、康代さんが中国で保護した猫さんのお話です。
2011年に上海で保護したストリートキャットのらおばんちゃんを、7ヵ月もの出国手続きを要した末に日本に連れ帰った康代さん。
でも、またすぐに夫の仕事で中国へ。今度の赴任地は北京です。検疫のための係留期間が2週間もある北京を避け、天津にいったん入国ののち、北京へ向かいました。
北京では、2016年にまたまたほっとけない猫に出会ってしまいます。それが、このみ~しゅちゃん。
お日さま大好きで、優雅にマンションの出窓で、東京の街々を見下ろしている今のみ~しゅちゃんなのですが......。
こう見えて、らおばんちゃんと同じく中国のストリートキャットだったのでした。
「友人のマンションがあるエリアで、マンション管理の方々にお世話されていた猫でした。目の前で困っている猫を保護したことは何度もあるのですが、この子の場合は、話を聞いただけで、すぐに保護しようと思いました。片目が見えなくて、飼い主に2度棄てられた子らしいという話だったんです」と、康代さん。
保護後に譲渡先を探すつもりでしたが、どうやって探したらよいのかわからず、獣医さんに相談すると、「何でも協力するから、とにかくすぐに保護しなさい」とのこと。
猫用おやつで釣って、ケージに入れて連れ帰りました。
獣医さんに逆さまつげの手術もしてもらいましたが、左目の視力は戻りませんでした。
北京では、かつて皇帝が故宮に選りすぐって集めた美猫が町に逃げ出したりした子孫が多いと言われ、み~しゅちゃんのような長毛の猫がけっこう町なかにいるのだとか。
さて、保護され譲渡先を探してもらうはずだったみ~しゅちゃん、その愛らしさでパパとママをすっかりとりこにしてしまい、2匹目の猫になるのに時間はかかりませんでした。
やってきた当初、らおばんちゃんに対しては「らおばんさん、よろしくお願いします」という殊勝な態度だったのですが。
「猫をかぶってたんです。この家の猫になれたとわかったら、もう態度がころっと大きくなって(笑)」と、康代さん。
新しい猫を迎えたら、先住猫に先に話しかけるというセオリー通りに、らおばんに康代さんが話しかけるや、真ん中に割って入り、らおばんに猫パンチ。
威嚇するやら監視するやらで、らおばん先輩を追いつめる毎日。らおばんちゃんは、おおらかに構えているのですが、さすが追いつめられると手が出るときもあります。そうすると、体格の大きならおばんちゃんの勝ち。
見かねて、康代さんは、らおばんちゃんに頼みました。
「お願いだからケンカはしないで」
すると、らおばんちゃん、その日から、み~しゅちゃんに追いつめられると、ゴロンとおなかを見せて転がるようになったのです! み~しゅちゃんは気勢をそがれ、そこで終了。
そのうち、み~しゅちゃんが近づいてくるだけで、らおばんちゃんはごろん。2匹が平和に共存するソーシャルディスタンスが出来上がりました。らおばんちゃん、大人(たいじん)です!
さてさて、2匹を連れて日本に帰国するときは......。
らおばんちゃんの最初の帰国時で手続きにものすごく日数のかかることは学習済みだったので、いつでもOKなように早め早めの準備をしていたのですが、ちょうどコロナ禍。
北京から日本への直行便はなし。大連まで車で10時間移動したのち、そこからの帰国となりました。
夫妻と2匹は、いろいろ大変な経験を共にし、「家族」となったのです。
お気に入りの部屋や場所はそれぞれですが、ご飯は並んで食べます。
み~しゅちゃんの好きなおやつは、カリカリ。
らおばんちゃんの好きなおやつは、サラダ菜。
「今でもけっして仲がいいとは言えない2匹なのですが、病院に連れていくときにらおばんが鳴くと、「どうした、どうした」とみ~しゅが気にかけるのは、なんででしょうね」と、康代さんは笑います。
11歳のらおばん(老板・社長)と、9歳のみ~しゅ(秘書)の関係は、じつは案外、認め合う相棒となっているのかもしれません。
康代さんは言います。
「私にとって、らおばんはなくてはならない相棒で、み~しゅはアイドルかな」
「毎日、それぞれに話しかけるんです。『らおばんみたいに可愛い子は見たことないよ』『み~しゅも同じくらい可愛いいよ』って。毎日可愛くてしようがない。毎日がしあわせ」
可愛いね、というママの語りかけを聞きながらウトウト眠る、み~しゅちゃんの純白の毛が夕陽色にほんのり染まり始めました。
いつか、らおばんちゃんと並んでひなたぼっこする日が来るといいね。
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。
『
猫は奇跡』
"ふつうの猫"たちが起こした奇跡の実話17選
『
猫との約束』
猫は人生にドラマを運んでくる。ささやかでも、至福のドラマを
『
寄りそう猫』
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。
『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。
『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。
『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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毛の色は同じでも、性格も食の好みも違う二匹の微笑ましい日常が分かって一安心。国際感覚豊かな家庭に世話になれて本当に良かった。皆様、末永くお幸せに。
by Y.M 2024-10-22 17:26
らおばんちゃんとみ〜しゅちゃんの距離感がいいですね。凄く仲が良いわけではないけど、ちゃんと認め合ってるんですね。それと、毛並みも美しい!
うちにも片目が見えない仔がいます。目薬が欠かせませんが、他の仔と全く変わらず元気ですよ~
by ちぃ 2024-10-22 19:39
なるほど~、らおばんちゃんの大人対応でみ~しゅちゃんをお迎えしたのですね。
上海猫と北京猫さんが一緒というのも何だか楽しいです。
現代版「京滬同舟」としておきましょう。(敵じゃありませんが...)
by ヤンヤン 2024-10-23 20:43
>Y.Mさん
一口に「白猫」と言っても、ほんとうに性格も好みも雰囲気もそれぞれ。
だから、猫って面白い!!
by 道ばた猫 2024-10-24 13:10
>ちぃさん
猫にとって、片目が見えないことなんて、なんのそのですよね。
目薬してもらって、これからも元気に過ごしてね!!
by 道ばた猫 2024-10-24 13:12