中国に滞在時、上海と北京でストリートキャットを保護して帰国したという、康代さんのマンションに遊びに行きました。
猫たちのために「陽当たり」が第一条件で探したという都内のお住まいです。
リビングに入るなり、目に飛び込んできた風景。
大きなガラス窓越しにさんさんと陽の光を浴びている真っ白な長毛猫さんです。
「み~しゅ」ちゃんですって。
「この子はおひさまが大好きなんです。人懐っこくて、『カワイイ』ことが彼女のお仕事」と、康代さんは目を細めます。
左の眼は見えていないそうですが、右目は、今日の綺麗な空と同じ色。
2016年に北京で保護してもらったみ~しゅちゃんのお話を聞く前に、2011年に保護した先住の「らおばん」ちゃんのお話から聞かなくちゃ。らおばんちゃんはどこにいるのかな。
らおばんちゃんは、寝室の出窓で、お気に入りのマスコット人形を枕にうとうとしていました。
み~しゅちゃんと同じく白猫さんですが、ほんのりクリームがかった短毛さんです。
らおばんちゃん、カッコいい!! 雄猫と見まごう大きさと存在感です。
「らおばん」は、中国語で「老板」と書き、ボスとか社長と言う意味なんですって。
「この子は、難しい子で、仲良くなるのはまずご無理です」
そんなご紹介でしたが、ふとなんだか仲良くなれそうな気がしました。
康代さんは、夫君のお仕事で、2006年から6年間、上海に住んでいました。帰国も近くなった頃に、出会ったのがストリートキャットだったらおばんちゃんでした。
その日に会う約束だった友人がこの駐車場で見つけた子。
生後2~3カ月というのに、たった500グラムしかなくて、ノミの糞で真っ黒になっていて、ご飯をあげても食べる力がないくらい衰弱していました。
友人は犬や猫を飼っているので保護後の隔離が難しく、康代さんが急きょ預かることになりました。
「帰国の日が決まっていたので、自分で飼うつもりはありませんでした。譲渡先が見つかりまでの預かりを引き受けたつもりだったんですが」
預かって間もなくの写真です。見事に真っ白になりました。
康代さんは、路頭に迷う子を保護して譲渡した経験は何度もありました。自分で飼うつもりがなかったのは、中国から日本に猫を連れ帰るのには、手続きに7ヵ月以上を要するからでした。
なぜなら、中国にはまだ狂犬病が根絶されておらず、猫も罹ります。狂犬病のない国への帰国はとても用心されているのです。狂犬病の抗体注射を間隔をあけて2回打ち、抗体ができているか、冷凍血液を日本の機関に持ち込んで調べてもらうため、血液を採取した日から半年はかかってしまうのでした。
「中国にはノラがたくさんいますが、狂犬病を警戒して触る人はいません」とのこと。
でも、日に日になついて可愛くなるらおばんに情が移ってしまったご夫婦。夫が先に帰国し、康代さんが残って手続きを済ませ、猫と一緒に帰国するという決心をしました。
「らおばんとは、もう家族になっていたんです。どんなに手続きが大変でも、家族を置いてなどいけません」
「そうなの。家族にしてもらって、はるばる日本に来たの」と、いつのまにかリビングに来て、わたしを見つめていたらおばんちゃん。
それほど大変だったのに、なんと3年後、再び夫の中国赴任で、今度は北京へ。
「ふーん、それはまた大変な思いをしたのかな」
訴えるような目のらおばんちゃんのあごの下をそっと撫でると、目を細めてくれました。
日本から中国へ入国するときは、もしもの手違いなどが起こらないよう、業者の仲介を頼んだそうです。
らおばんちゃんは、お父さんとお母さんの寵愛を浴びて、ふくよかな猫に成長しましたが、北京ではまたまたストリートキャットの新入りがやってくるというハプニングが待っていました。それが、み~しゅちゃん。
み~しゅちゃんがやってきてからのお話は、来週に続きます。
「み~しゅ」は、中国語で「秘書」と書きます。
さて、ドンと構えた社長と気の強い秘書との物語はどう続くのか、お楽しみに。
「上海の人と北京の人はすっごく仲が悪いんです」と康代さんは言っていますが......。
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。
『
猫は奇跡』
"ふつうの猫"たちが起こした奇跡の実話17選
『
猫との約束』
猫は人生にドラマを運んでくる。ささやかでも、至福のドラマを
『
寄りそう猫』
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。
『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。
『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。
『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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社長さんと秘書さん! 命名が素敵過ぎです〜
中国は、まだ狂犬病があるんですか? 知りませんでした。だから、触らないかー 何だか切ないですね。
白猫さんはちょっと難しいんですかね。うちの末っ子の白猫さんも、懐くのに時間がかかりました。でも、今は、一番おしゃべりしてくれます。
by ちぃ 2024-10-15 15:40
白毛が美しい猫は珍しい。中国語の名前を見ると、体全体からエキゾチックな雰囲気を感じるから不思議。それにしても猫の海外旅行の大変さを乗り越えての、み~しゅちゃんとらおばんちゃんの共同生活とは、次回を楽しみに。
by Y.M 2024-10-15 16:46
息子夫婦がメキシコで飼っていた猫ちゃんたちも、日本へ帰国する際は動物検疫に半年ぐらいかかりました。その間現地の同僚に預かってもらって、後日迎えに行きました。生きものの国際的移動は大変なんですね。
by ムヨク 2024-10-16 18:58
>ちぃさん
白猫さんは甘えんぼさんな分、どのくらい甘えさせてくれるか見極めるのに時間がかかるんでしょうか(笑)
結果、甘えん坊になってくれたら、言うことなしですね!
by 道ばた猫 2024-10-17 16:50
>Y・Mさん
らおばんちゃんも、み~しゅちゃんも、ちょっと高貴な不思議な存在感のある猫さんでした。
同じ白猫でも、個性の違う2匹との暮らし、楽しそうですね!
by 道ばた猫 2024-10-17 16:53
>ムヨクさん
後日迎えに行くという手もあったんですね!信頼できる預け先があればこそですが。
息子さんのおうちの猫さんも、ぜひ取材したいです!!
by 道ばた猫 2024-10-17 16:55
真っ白ならおばんちゃん、北京生まれとは驚きでした。
動物の検疫が大変なのは聞いていましたが、日本に来られて良かったです。
そこから上海への旅立ちというのも凄すぎますね。
み~しゅちゃんとの出会い、続編を楽しみにしています。
by ヤンヤン 2024-10-18 05:13
かわいすぎる🥹愛情たっぷりですね
by えびちっち 2024-10-18 22:41
>ヤンヤンさん
らおばんちゃんは上海生まれで、み~しゅちゃんが北京生まれなんです。
それぞれ個性的で、存在感ありますよね~。
by 道ばた猫 2024-10-24 13:06
>えびちっちさん
それぞれにひき込まれる綺麗な瞳でした!
社長と秘書というネーミングも、絶妙です(笑)
by 道ばた猫 2024-10-24 13:08