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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2024年12月10日

カラスに狙われていたさつきくん

※本記事には、怪我などの描写が含まれます。苦手な方はご注意ください(猫を取り巻く現状のひとつとしてお伝えするため、原文のまま掲載をしております)。

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お父さんに抱っこされているのは、さつきくん。
お父さんは、お母さんと一緒に夫婦で「どんぐり山農園」と言う有機農業の農園を営んでいます。

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さつきくんのシッポがピンとたっているのは、とってもご機嫌な証拠。
広い農園には、走り回る場所も隠れる場所もいっぱいで、毎日が楽しくてなりません。

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お母さんの自転車のカゴに乗って移動したりもします。
このおうちには3人の息子がいましたが、全員大きくなって自立した今は、さつきくんが4男坊としてお父さんお母さんに甘え放題。さつきくんはこの家に初めて迎えられた猫なのです。

今年5月。その日は、朝から雨でした。お父さんは、家の前の小道を通りかかったとき、畑でカラスが何かを突いて食べているのを見かけました。何だろうと近寄ってみると、それはもう毛皮だけになった子猫のようでした。
「自然界は残酷なものだなあ、と思いながら家に戻って作業をしていたお父さんの耳に、甲高い子猫の鳴き声が小道の方から聞こえてきます。ニャーッ、ニャーッ。
行ってみると、さっき子猫が食べられていた畑の近くから、また別の灰色っぽい子猫が小道に這い上がって、お父さんの方へよたよたと向かってきます。生まれてそんなにたっていないような子猫です。助からなかった子ときょうだいだったのでしょうか。全身びしょ濡れ、泥まみれ。ふと見ると、電柱の上からカラスが狙っているではありませんか。
お父さんは、とっさに子猫を保護しました。
じつは、どんぐり山農園は猫はご法度だったのですが......。

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「洗ってやって」と、泥まみれの子猫を手渡されたお母さんは、子猫を洗ってやったあと、ハタと困りました。「うちでは猫はご法度なのに」。
そう、どんぐり山農園は、平飼いの養鶏もしていたのです。以前、野良猫に鶏やヒヨコをやられたこともあり、猫は「天敵」であり、猫持ち込みなど「ご法度」なのでした。
洗ってもらってきれいになった子猫。
でも、様子がおかしいのです。動物病院へ連れていくと、体左半分にあちこち傷があり、口の中に大きなトゲらしきものが刺さっていました。それは、折れた歯で、左頬の骨もくだけていました。カラスに持ち上げられて地上に落とされたときに、左頬を強打したと思われます。
刺さった歯を抜いてもらった子猫は元気になり、哺乳瓶でミルクを飲んですくすく。誰のもとにも寄っていく無邪気な子です。
お父さんとお母さんの胸には「鶏と仲良くなってほしいなあ」という気持ちが生まれていました。
農家仲間にいろいろ聞くと、口々にこんな答えが。
「案外仲良くなるよ」
「小さいうちから一緒だと、大丈夫だよ」

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「猫を飼ったよ」
家族ラインで息子たちに知らせると、みな驚くと同時に大歓迎。長男はとても喜んで東京から飛んできました。
どうやらずっと猫を飼いたかったらしいのです。次男も離れた町からやってきました。三男も、夏休みに滞在して子猫の遊び相手をしてくれました。

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5月にやってきたので、「さつき」と名付けられた子猫は、少しずつニワトリさんとご対面。
まずは弱いニワトリが2~3羽別グループで暮らしているのを金網戸越しに見学。さつきくん、大いに興味を持ちました。 「ねえ、ねえ、遊ぼうよ」という感じで、前のめりです。
いつの間にか、金網のほんの少しのすき間から入っているではありませんか!

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「気がつくと、しょっちゅう鶏小屋に入り込んで、一緒になってウロウロしたり寝てたりしてます」と、お母さん。
農家仲間の言ったことは正解でした。
さつきくんは、お父さんとお母さんが農作業を始めると、広い敷地をくっついて歩きます。

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畑が大のお気に入りで、作物の列の間を走り回ります。

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見るからのやんちゃな坊やですが、ニワトリとは友好関係を築き上げています。

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ヒヨコたちにも会わせてみたところ、大丈夫でした!
「あとは願わくば、鶏のエサを食べてしまうネズミ番をしてほしい」とお母さん。
頑張ろうね。

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「飼ってみれば可愛いものですね」と、目尻を下げるお父さん。
お母さんは言います。
「さつきが来てから、楽しいことがいっぱい増えました。息子たちがよく家に帰ってくるようになったし、夫婦げんかが減ったし、笑うことが多くなりました。
初めて作ってみたミツバチの巣箱からはちみつが採れたことや、農作業につきものの腕や指の痛みが、この子が来てからなぜか軽減したのもうれしい」
どうやら、さつきくん、かなりの福猫だったようです。



「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。

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"ふつうの猫"たちが起こした奇跡の実話17選

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道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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