残すところわずかとなりましたが、今年も心に残るたくさんの猫たち、そしてその保護主さんたちと出遭いました。そして、つくづく思います。猫って、人と人をつなげて、いつの間にかまあるい輪を作ってる!
ひとつの大きな輪をご紹介します。
輪の真ん中は、この猫さんです。
成田市の無農薬野菜の農家さんたちの共同出荷場「おかげさま農場」の事務所猫チャーリーちゃん。
くぅちゃんという保護猫のいるカフェマガタさんで、2年前にたまたま出会ったのが、おかげさま農場の農家さんである尚子さん。カラスに襲われていた「つな」ちゃんという猫を飼っていて、農場事務所にもチャーリーという保護猫がいると聞き、すぐに取材に行きました。
チャーリーのお話 → 2023年1月31日の道ばた猫日記「
農場のチャーリーちゃん」
その後、尚子さんは、行き場のなかった「わら」くんも保護。
「猫びより秋号」の「猫と秋」特集で、秋野菜に囲まれたチャーリーに再取材したのは、7月初め。取材中、ハプニングが起きました。近くの民家の方が「朝から子猫の必死な鳴き声がする」と駆け込んでいらしたのです。
子猫はカラスに襲われてしまい、とても危険な状態でしたので、すぐにふたりで成田市内の病院へ運びました。
右前脚は麻痺、骨折してしまった右後ろ脚の治療は非常に難しい展望でしたが、「うちの子にします。踏まれても立ち上がるように名前はむぎ」と診察中に決めた尚子さん。遠方ゆえ、通院治療は何一つ手伝えませんでしたが、少しでも協力したいと、私はむぎちゃん基金のためのチャリティートートを作り、かざぐるまのコーナーに置いてもらうことにしました。モデルはチャーリーが務めてくれました。
店内で手に取ってくださった方、インスタを見て買いに来てくださった方、インスタのダイレクトメールで注文してくださった方、たくさんのあたたかな気持ちがむぎちゃんに寄せられました。
直売所に商品を納入なさっている「結城商店」さんは、安曇野で妹さん夫婦がなさっているコーヒーショップ「TRACK」さんでもトートを扱うようつなげてくださいました。
また、インスタでむぎちゃん基金のことを知ったusanekoさんは、何度も足を運んでは購入してくださり、岐阜県で売り上げの一部を保護猫たちに寄付している「キーちゃんコーヒー焙煎所」さんからの支援につないでくださいました。
さらに猫の輪は思わぬ広がりを見せます。
尚子さんは、不幸な猫をなくしたいと、地域のおとな猫の一斉手術やノラ母さんから生まれた子猫の保護譲渡に、仲間と手を繋いで立ち上がります。
むぎちゃんのお母さんとお兄ちゃんも保護され、いっしょのおうちにもらわれていきました。2匹を預かった上に、譲渡先を見つけてくださったのは、「home for paws」の紗由理さん。元野犬の子たちを自宅シェルターで預かって譲渡する活動を取材させていただいたご縁がするするっと伸びて、尚子さんにもつながったのです。
さらに、紗由理さんは、尚子さんの知り合いが保護した「ポリッピー」も預かって譲渡につなげてくださいました。
先住の保護犬くうちゃんと、今やいい仲になったポリッピーです。
尚子さんは秋には近くのお山の上で、子猫きょうだい4匹をお仲間とともに保護。1匹はもらわれていき、残るは、3匹。
尚子さんがお店の当番の日は、人間に慣れるために店内のケージで過ごす子猫たち。チャーリーも「早くおうちが見つかるといいね」とお姉さん顔です。
「預かりボラをしてみない?」
そんな私の誘いにすぐに「イエス」と応じてくれたのが、道ばた猫日記で登場(リオくんイケメン化計画)のチセさん。お山3きょうだいのキジトラの男子は、あのチセさん・るいさん・みささん・ゆーこさんの最強チームで、しっかりと譲渡までを引き受けてもらえました。
みい太と名付けられたキジトラ君は、毎日やんちゃをして、すくすく育っています。
残る2匹の男の子は、譲渡先募集中。かざぐるまで会えるかも。
大けがのむぎちゃんは......足にうっすらとお肉がついてきた段階で、この先まだまだ感染症を防ぎながらの治療は続きます。
でも、ほら、お山兄弟に混じって、毎日ハッスル。2本の脚は麻痺していても、グルグル包帯を巻いていても、いたって健康に育っています。
つらい思いをしている猫に手を差し伸べるのは、相当の覚悟が要ります。誰でも簡単にできることではありません。でも、いろんな人がそれぞれできることで手を結び合うまあるい輪ができれば、前に進めます。
あちこちに大小さまざまなまあるい輪ができて、外で暮らす猫たちが皆、まあるい輪の灯のなかに入れてもらえますように。クリスマスにはそう祈ります。
さて、お知らせです。
「猫は奇跡」の発売を記念して、私の猫絵で、辰巳出版から「
いつもそばにいる猫」スタンプが発売されました。(絵の猫さんは人間大好き設定で、チャーリーに似ているかも)
前作「猫との約束」を編集してくださった方がデジタルマーケティングの部署に移り、「猫は奇跡」の編集者さんと、WEB連載「保護犬たちの物語」の担当編集者さんのアドバイスを得て、生き生きとした画面に仕立ててくださいました。これも、うれしい猫の輪です。
使っていただけたら、さらに猫の輪が広がってうれしいです。
たくさんの人を結んでくれたチャーリーのいるおかげさま牧場の直売所かざぐるま(成田市伊能 220)は、冬季は12時から17時まで(30日~正月4日まで休み)。
店内で譲渡先募集中のお山の上の兄弟にも会えるかもしれません。
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。
『
猫は奇跡』
"ふつうの猫"たちが起こした奇跡の実話17選
『
猫との約束』
猫は人生にドラマを運んでくる。ささやかでも、至福のドラマを
『
寄りそう猫』
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。
『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。
『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。
『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!
『
いつもそばにいる猫』
描き下ろし猫スタンプが登場。猫たちがあなたのトークルームに寄り添います!
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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