※本記事は障がいを持ちつつも、自由に過ごす猫さんをご紹介しています。一部、怪我などの描写が含まれますので、苦手な方はご注意ください。
新しい年の始まり1月は、家猫になって初めてのお正月を迎えた猫さんたちをご紹介していきます。
まずは、茨城県に暮らすラブちゃんから。
ハチワレ模様とピンクのお鼻が愛らしい、推定1歳4か月くらいの女の子です。
取材の日は小雨が降り続き、お外の景色を眺めるのに飽きてきたらしきラブちゃんを、お母さんが猫じゃらしで遊びに誘います。
目の前で振られるじゃらしに、パクッ。上手にお口でキャッチできました。
もう逃がさないわと、ハッスルラブちゃん。
お気づきでしょうか。
そう、ラブちゃんには両前脚がありません。
お気に入りの窓辺で外を眺めたいときは、自分でこたつの上からのぼります。
まず上体を出窓に預けてから、後ろ足を交互に乗せてよいしょっ、と。こんな段差、何のその。下りるときも後ろ脚でトンと着地。ラブちゃんはしなやかに自立した女の子です。
押入れの中には、ラブちゃんの陣地があって、ひとりで過ごしたいときはそこにこもります。
お母さんとラブちゃんとの出会いは、去年秋の譲渡会。
お母さんにひとめぼれされたのでした。
ラブちゃんは昨年2月に、違法トラバサミによって両前脚をなくした状態で、湖畔で発見されました。ノラだったのか、捨て猫だったのかわかりませんが、まだ幼い子猫でした。
保護されたラブちゃんを診た獣医師さんは安楽死やむなしと、いったんは判断しましたが、関わる人たちの「生かしたい」という強い思いが結集して両前脚切断手術(※脚の壊死を防ぐため)をすることに。
ラブちゃんは手術に耐えた後、自分であれこれリハビリをがんばり、ひとつずつできることを増やしていきました。
そして、食事も排泄も階段の上り下りも遊びも「ふつうの猫と変わらない」自立した暮らしを始めます。
(ラブちゃんのここまでの詳しい物語は「猫は奇跡」の第5章で書きました)
お母さんがそんなラブちゃんを迎えたのは、ラブちゃんが可愛かったことはもちろんですが、障がいを持っていてもものともせず、ありのままに暮しているこの子と暮らしたい!と思ったからだそうです。
「人間社会って、障がいやら職業やら収入やら外見やら、いろんなことを差別しあって生きているけど、猫たちはまったく違う。この子にしてもこんなにつらい思いをしたのに、ふつうに生きている。すごいと思います」
ラブちゃん、可愛がられて、まるっとしてきたね。
私がラブちゃんに初めて会ったのは、保護まもなくの去年春。やっぱり窓辺が大好きで、よいしょと上がっては外を眺めていましたっけ。
景色は違うけど、いつでものぼれる窓辺のある暮らし。よかったね!
ラブちゃんの今は、たくさんの人の愛があってこそ。
(上写真は、右から発見者の山下さん、手術執刀の満川先生、保護預かりの成井さん。このほかにも手術を指導した齊藤先生など、たくさんの「生かしたい。しあわせにしたい」思いが結集しました)
ラブちゃんの名をつけたのは、保護預かりの成井さんです。
「周りから愛される存在に」との思いからだったのですが、「逆でした。ラブからたくさんの愛をもらったのは私たちのほうでした」と言います。
そして、ラブちゃんを送り出した成井さんには、注いだ愛をいっぱい返してくれる保護っ子たちが、今日も待ったなしで次々と。奮闘は続きます。この保護っ子にも、いいおうちが見つかりますように。
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。
『
猫は奇跡』
"ふつうの猫"たちが起こした奇跡の実話17選
『
猫との約束』
猫は人生にドラマを運んでくる。ささやかでも、至福のドラマを
『
寄りそう猫』
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。
『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。
『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。
『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!
『
いつもそばにいる猫』
描き下ろし猫スタンプが登場。猫たちがあなたのトークルームに寄り添います!
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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長い眉毛の下にあるラブちゃんの目線の先には何があるのだろうか、その目の中には何が映っているのだろうか・・・。それにしても沢山の愛を受けてここまで育ったラブちゃんの瞳は本当に美しい。お世話になった方々の姿が映っているからだろうか。障害のある子もない子も分け隔てなく、安全で平和な日が来ることを願いたい。保護活動の皆様方、そして保護猫を受け入れて下さっている方々、本年も宜しくお願い致します。
by Y.M 2025-01-14 15:32