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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2025年03月18日

「意地悪ねえさん」のお見合い

先週の「嫌われぶち」と呼ばれていたぶち君のお話に続く、成田市の無農薬野菜直売所「かざぐるま」周りの農村の猫たちのお話です。

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ねねちゃんは、「意地悪ねえさん」と呼ばれていたノラ猫です。
去年12月10日の当ブログ「カラスに狙われていたさつきくん」でご紹介した農村地区に、1年近く前から現れて、近くの民家でご飯にもありついていたようです。

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カラスに狙われていた子猫のさつきくんが養鶏農家に保護されて、お父さんお母さんに可愛がられ、畑作業にもくっついて出てくるようになると、その様子がおもしろくなかったようです。

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執拗にさつきくんを虐め始めました。それで、ついた呼び名が「意地悪ねえさん」。
困ったさつきくんの飼い主さんは、農家仲間の尚子さんに相談しました。

尚子さんは、嫌われぶちが去勢手術をしてから、チャーリーを虐めなくなって友好関係を築き始めたことから、まずは意地悪ねえさんの避妊手術を勧めます。
意地悪ねえさんは2月7日にさつきくんのお母さんと尚子さんが獣医さんに連れて行って手術をさせ、その日の夜はさつきくん宅の土間でひと晩を明かし、翌朝にTNR。

びっくりしたことには、手術を終えて帰ってきたねえさんは、ご飯よりも何よりも、「よしよし、がんばったね」とねぎらうさつきくんのお母さんにスリスリゴロゴロがとまりませんでした。こんなに人が好きな子だったとは。
もうひとつ驚いたことには、もっと歳だと思っていたねえさんは、獣医さんからまだ1歳ちょっとと聞かされたのです。

ところが......。TNRしたものの、ねえさんのさつきくんへの意地悪は度を増していきました。
高い木のてっぺんに追いつめてしまったり。おびえて暮らすさつきくんに心を痛める飼い主ご夫婦。けっして村の人たちはねえさんを邪険にしたり追い払っているわけではないのに。

SOSを受けて、尚子さんは意地悪ねえさんにおうちを見つける決心をし、家にいったん引き取ることに。仮の名は「ねねちゃん」です。
ちょうど直売所に来るお客さんでチャーリーをとても可愛がってくださる方が「猫を飼いたい」と言っていたのです。ねねちゃんの写真を見せると、会ってみたいとのこと。

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尚子さんの家には包帯を解いたばかリのむぎもいるので、ねねちゃんは大きなケージ暮らし。でも、毎日仕事終わりの尚子さんに抱かれるひとときの姉さんは、うれしくてうれしくてたまらない様子でした。

よく見ると、意地悪そうに見えていた水色の目はとてもきれいで賢そう。おそらくシャムミックスと思われますが、心を許した人には大甘えですが、間に割り込んでくる猫には敵対することもありがちなのがシャムの特質。

ねねちゃんの意地悪も、シャムの特質+自分も思いきり甘えたいさびしさ故だったのでしょう。
「こんなに人が好きな子が、ひとりぼっちで暮らしていたのね」と、尚子さんもいじらしくてなりません。気に入ってもらえるか、お見合いの日まで、ドキドキハラハラです。
お見合いは、先週の水曜日。チャーリーが直売所をお見合い場に貸してくれました。

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お母さん希望の方の第一声は「可愛い~~!」
さっそくお膝に乗せられて、ねねちゃん、「えっ、えっ」といった表情です。

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チャーリーも見守ります。
この日は、いったい何度「可愛い」「可愛い」を浴びたことでしょう。

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この日、お母さん希望のかたは、4時間もねねちゃんを可愛がってくれました。ねねちゃんは安心してどんどん目が丸くなりました。
その3日後の、おとといの日曜日。また同じかたが、今度はお父さん希望とご一緒に会いに来てくれました。お見合い場は、出荷場の2階です。

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ねねちゃん、とっても嬉しそう。
「ね、ね、可愛いでしょ」
「可愛いなあ」
お父さん希望のかたは、猫と暮らしたことはありません。でも、扱い方がとっても優しくて、なんといっても広いお膝が、男の人に抱かれるのが初めてのねねちゃんはすっかり気にいったよう。

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ゴロゴロゴロと大きく喉を鳴らして、寝入ってしまいました。
ご夫妻のスケジュールの都合で、トライアルはひと月後と決まりました。
じつは、もうおふたりはねねちゃんに、とってもとっても素敵な名前を用意してくださっているのです。
「この子を迎えたい」という愛情がたっぷり詰まった、ものすごく個性的な文学的な名前です。

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上向き写真でお気づきになった方もいらっしゃるかもしれませんが、尚子さんがねねちゃんを手術に連れて行った際、獣医さんはこんなことをおっしゃいました。
「この子は口蓋裂(こうがいれつ)だけど、日常生活に何の支障もありません。でも、もし、譲渡先探しがスムースになるようなら、縫い合わせの手術をすることもできますよ」

口蓋裂とは、口腔と鼻腔がつながっているため、上唇の一部が裂けたように見える症状です。こぼす、食べにくいなどの支障がある場合は手術をします。
尚子さんがインスタで、「手術した方がいいか、皆さんどう思いますか?」と投げかけると、ねねちゃん応援団はこぞってコメントしました。「支障がないならする必要ないのでは。ありのままのねねちゃんを可愛いと思うおうちにもらわれていくはず」と、尚子さんが思っていた通りのことを。
ありのままのねねちゃんが最高に可愛いと思ってくれる家族の一員に。その通りになりそうです。

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ひと月先にトライアルに送り出す尚子さんは、「もう日に日に可愛くって可愛くって」と、甘えん坊全開のねねちゃんが愛しくてたまりません。
「あの子にこんな展開が待っていたなんて。顔つきがすっかり変わってる!」と、さつきくんの飼い主さんたちも、大喜びなさっています。

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「しあわせになろうね」
「にゃあん」


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道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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