くっついて、ぬくぬくと眠るふたり。
左がコタロウ。右がアンです。
コタロウとアンは、保護猫同士。一緒に暮らして3年と4カ月がたちました。
もう長いこと一緒にいるような仲のよさですね。
先住のコタロウは13歳。あとから来たアンは、年齢不詳なのですが、少なくとも5歳以上。「若いと思ったけど、もしかしたらもっともっと年なのかな」というのが獣医さんの見立てです。
アンは、コタロウが大好きで、いつもお顔を舐めてはびちょびちょにしています。コタロウおじさんは、やれやれといった風情。
アンが、この珈琲豆焙煎店「yagi-coya」にやってきたいきさつについては、2年前の6月6日の当ブログ「
安住の場所を見つけたアンちゃん」でご紹介しました。
ガリガリで町はずれをさまよっていたノラだったのです。
保護してくれた店主のヒロコさんにも先住のコタロウにもすぐに心を許し、甘え始めましたが、知らない人の前では、固まってしまう子でした。
そればかりか、いっしょに暮らすお父さん(ヒロコさんの夫君)にも、心を閉ざし、姿を見るだけで固まってしまう日々がいつまでも続いていました。
外をさまよっていた頃、眼鏡をかけた男の人に怖い思いをしたトラウマが消えないのです。
アンがやってくる前、コタロウが一緒に暮らしていた仲良しコンビは、チャイでした。
キラキラした瞳を持ち、名を呼べば飛んでくる愛らしい子。
お父さんが仕事先のごみ処分場のゴミの山の中から救い出した、脱水症状で死にかけの子猫でした。
チャイが、まだまだ愛らしい盛りに突然死したとき、ヒロコさんも泣きに泣きましたが、「それ以上にダンナが大泣きで、それで私が泣けなかったほど」と、ヒロコさん。
コタロウは、チャイのいた場所を何日も何日も探し続けていたそうです。
チャイのいない月日がたったある日、パン屋さんの前で見かねてヒロコさんが保護したのがアンでした。
新しい猫アンはクールで用心深く、愛くるしく懐っこく呼べば店にも飛んでくるチャイと、どうしても比較してしまう日々が続きます。
「チャイは可愛かった」の恋しさがどうしても抜けなかったヒロコさんでした。
お父さんにとっても、自分を見ると固まってしまい、絶対に触らせてもくれないアンに、心折れる毎日だったといいます。
それが......。
この冬のこと。ヒロコさんからこんな写メールが届きました。
「ダンナにすっかり打ち解けて、されるがままのアンの姿をどうぞ」
そこには、お父さんの服の中にすっぽり納まってご満悦のアンの顔がありました。
アンが、お父さんになつくまで、なんと3年かかったのです。
その間、アンは、じっとお父さんを観察して、「この人は私を虐めない」と確信したのでしょう。甘えたい気持ちがもう体いっぱいに高まっていたのかもしれません。
「ある晩、ふっとアンがダンナの膝に乗ったんです。『えっ』っと、ふたりで思わず顔を見合わせました(笑)」
その日以来、アンはお父さんとも大の仲良しになりました。
のびのび~~と、こんなポーズも。
今では、たまにお店の看板猫も務めます。
ヒロコさんは言います。「この子はまるでチャイに似てないと思っていたけど、この頃似てるなあと思うこともしばしば。呼べば『あん』と鳴いてすぐきてくれる甘えん坊のところとか。顔もどこか似てません?」
もちろん、アンにはアンの可愛さいじらしさがあることも、お父さんお母さんはよおくわかっています。
「賢くて、言葉のわかる子なんです」
じつは、最近の検診で、精密検査の必要のある病変がアンの体に見つかりました。
でも、お母さんはアンを抱きしめて言い聞かせてます。
「きっと大丈夫。この先もまだまだずっと長く一緒に暮らすんだからね! せっかく縁あってうちにやってきたんだもの」
アンちゃん。つらい思いをした日々の分、ずっとずっと愛されて取り返さなくてはね!
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。

『
猫は奇跡』
"ふつうの猫"たちが起こした奇跡の実話17選

『
猫との約束』
猫は人生にドラマを運んでくる。ささやかでも、至福のドラマを

『
寄りそう猫』
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。

『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。

『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。

『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!

『
いつもそばにいる猫』
描き下ろし猫スタンプが登場。猫たちがあなたのトークルームに寄り添います!
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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コタロウとアン、ピッタリと引っ付いて幸せそう。それにしても猫の好き嫌いはそうとうなもの、でも、3年かかったとはいえ、お父さんに心を開くことが出来たアンはすごい。病気を発症することなく甘えられる日が長く続きますように。
by Y.M 2025-04-08 15:21
慣れるまで3年の月日を要したアンちゃん。アンちゃんも頑張ったけど、主さまにも頭が下がります。
猫さんの個性やら、今までの猫生とかによるんですね。
うちにも、白黒の元野良さんがいます。同じで、年齢が分からず、案外高齢?と思うことがあります。それでも、うちで一番の甘えっ子。
アンちゃん、いっぱい甘えてねー!
by ちぃ 2025-04-08 18:38
お父さんに懐くまで三年ですか!
猫の個性や、過去の体験とかが影響するのでしょうね。
我が家の姫は三カ月の頃保護施設からやってきましたが、初日から膝上ゴロゴロでした。
当時猫初心者としてはそれが当たりまえだと思っていましたが... (汗)
チャイくんの姿も懐かしいです。コタロウくんとアンちゃん末永くお幸せに。
by ヤンヤン 2025-04-10 07:40